十字王-後編- 3
会議室の長机に腰を掛け、二体のテックボットをはべらせたバリスタは
言葉通り王様を気取ってこう告げた。
「案外早かったな、流石は現リーダーというべきか。・・・だが。」
頭部に刃をとりつけた同型色違いの二体のテックボット、サーベルとロンデルが武器を構える。
「貴様がその椅子に座っているのも今日までだ。」
怪訝な顔をする二人を見て、バリスタは再びニヤリ、と笑う。
「・・・なに、案ずるな。命はまで取りはせぬ。
いずれは余のため人のため・・・身を粉にして働いてもらうのだからな。」
アームがサーベル、ブレイドがロンデルに掛かり、両者はそれをいなす。
自我を失っているとはいえ・・・否、自我を失っているからこそ
本来の兵器としての性質は十分に発揮されており
サーベルの長刀さばきとロンデルの短刀二刀流が二人を追い詰めていく。
「自らの手を汚さずに敵を倒す・・・か。
むやみに手を出せねぇと知ってコイツらを盾にするたぁ・・・
大した帝王学だねェ、王様よぉ・・・!」
軽口をたたくブレイドに、腕に内蔵されたツメで長刀を抑えながらアームが指示を出す。
「ずいぶんな余裕じゃないですか。・・・致し方ありませんね。武装をはぎとるまでなら許しましょう。」
といいつつ爪をひねり、サーベルの長刀を弾き飛ばし
頭部の刃での頭突きをかわすと、額に手のひらをたたきつける。
メイルたちと同じやり方で、サーベルを停止させたのだ。
もう一方のブレイドも、武器を握る手への打撃により短刀を叩き落とし
バランスを崩したロンデルの頭部の刃を片手で地面に押さえつけた。
「・・・ふむ。想像以上、さすがに強いな。」
白々しく驚いて見せ、いまだ余裕を余らせるバリスタにブレイドが剣を突きつける。
「残るはお前だけだぜ?王様よ。
丸腰のとこ悪いが・・・さっさと片付けさせてもらう。」
「丸腰?・・・ふふ。それは違うな。
今しがたちょうど良い武器を拾ったばかりなのだよ。」
バリスタの瞳に映る十字のラインがより強く光ったと同時に、ロンデルが獣のような叫びをあげる。
そしてブレイドの身体を跳ね飛ばし、バリスタのそばに跳ねる。
・・・と同時にロンデルのボディが上下に分離し、巨大な剣のような形になった上半身をバリスタが握る。
そして、長机から降りる彼の背中にブースターとなった下半身が取りついた。
サーベルとロンデルに搭載された友軍機支援システム。
自らを武器とバックパックに変形して味方を支援、強化するシステムだが
最悪に近い形で機能する形になってしまったわけだ。
アームの顔から珍しく焦りが見える。
「”こんなこともあろうかと”だ。わが前任者よ。
自ら手を下す事も見越して武器を用意しておいたのだよ。」
それを見たバリスタは自慢げな顔で告げた。
「さあ、遠慮はいらぬ。
そして光栄に思うがいい。
王と斬り結べることを・・・な。」
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