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十字王 -後編- 2


「なあ、旦那よ。あんたがバリスタをジャックしちまえば話は早いんじゃねえのか?」
その言葉を聞いて、アームが顔をしかめる。
「わかって言っているのですか?
 彼や私にはある程度電波干渉を防ぐ能力が備わっています。
 せいぜい体の動きを鈍らせる程度しか期待できないでしょう。」
まあ、当然のことながら指揮官タイプとして開発された以上、他のテックボットには
ないような機能を持っているのも、不自然な話ではない。
要するに、つくりの基礎が違うのだ。


フィンクを横目に通路を進むとオフィスエリアにたどり着く。
廊下に並んだ扉のひとつ。唯一ノブが傾いた扉を
勢いよくはじき開けると、ある『ニオイ』が襲ってくる。

オフィスに充満したこの苦く渋い薫り・・・コーヒーの匂いだ。
見ると室内に設置されたコーヒーメーカーが、カップから溢れて床を濡らすほど
中身のコーヒーをはきだしつづけている。

「あきらかに・・・バリスタの仕業、ですね。
 てあたり次第に機械を暴走させているようですが、陽動のつもりでしょうか?」

ガコンッ!ボン!

背後の扉が閉じ、軽い爆発音が響く。
アームが苦々しげに、煙を上げた扉横のカードリーダーをにらみつけた。

「シャレたマネしてくれるじゃねえか。俺たちを閉じ込めたつもりかい?」

閉じた扉は防災のため厚くできており、簡単に蹴り破れるほどヤワではない。

が。

「改装工事だと思えばいいだろ?
 ちゃっちゃと叩き斬ってズラかるか。」

ブレイドが背中の剣に手を伸ばすとアームがそれを静止する。
「どうせ壊すならこっちでしょう」
そう言うと、アームの胸部装甲が開き、備えられたエネルギー砲が露出する。
おいおい、本気か・・・と顔をひきつらせるブレイドをよそに、
アームの胸に熱が集まり、光球となって発射された。

衝撃波のような熱風が周囲に放射され、ズガンッ!!という轟音と共に、扉とは別方向、
ホワイトボードのかかった壁が破壊される。
「どのみち、新しいものに取り換える予定ですし。」

なんとか壁としての体裁を保っている壁面に前蹴りを入れて、壁に大穴を開けるアーム。
顔には出さないが、内心そうとう頭にきているらしい。仕草からそれが見て取れた。
「あなたの皮肉グセがうつったようですね。そう思いませんか?
バリスタ。」

土埃のまう壁の向こう側。
足を組み、隣室の長机に腰をかけ、不敵な笑みを浮かべる
バリスタに向かって、アームはつぶやいた。
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Author:山
オリ人外キャラ好きのCURURU難民です。
創作系の漫画や小説やってます。
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