かいぞーき!高速のレースクイーン?
再び。ハウスに到着する。
いままでとは違う、異様な雰囲気に気づくのは、遅すぎるくらいである。
「・・・おやっさん・・・」
ドアに手をかける。
ふと、その反対に張ってある張り紙に気づいた。
・・・どうやら、自分がいなくなった後すぐ例の最新型を購入したらしい。
レーサーのリストに、もう自分の名前はなかった。
ガチャ・・・
「・・・エイナ!!」
「・・・おやっさん・・・」
「こ・・・壊れて・・・いや、死んでなかったのか!?」
「どういうことでやんす!あのとき・・・一体何があったでやんす!?」
まだ言葉は流れ出る。
「おやっさんはあいつらに利用されてるだけでやんすよね!?
そうだって言ってください!・・・御願いだから・・・」
オーナーは一瞬、沈黙に入ったが、すぐに口を開いた。
「ああ・・・そうだとも・・・!!
お前は信じてくれるんだな・・・!?俺のことを・・・!
その通りだ!あいつらに俺は騙されて・・・あの日だって・・・!」
「・・・あの日?」
「そうだ!あの日だ!お前が行方不明になった、あの日だ!
あの日・・・俺は奴らと密会を開いていた・・・誰かが覗いていたらしくてな・・・
奴らの仲間が追っ払ったとは言っていたが・・・まさか、お前が・・・」
エイナは悲しくなった。苦しかった。ずっと涙をこらえていたが、もう。
怒りと涙を抑えることはできなかった。
「・・・バカでやんす・・・あちきは・・・」
「・・・?」
「なんで・・・しんじちゃったのかな・・・」
「おい・・・何を泣いてるんだ?
とにかく、お前の席はまだ・・・」
「見え透いた嘘をつくなッ!!」
「・・・・・・!」オーナーは一瞬たじろいだが、すぐさま切り替えした。
「なんだその言い草はッ!!お前・・・恩を・・・」
「じゃあなんであちきの名前がリストにないでやんす!?おととい行方不明になったばかりの
名前をすぐに消した理由は!?」
「そんなもの・・・!」
「なんで・・・死んだとすぐにおもったでやんす・・・?なんで"覗いてた奴"を
見てないあんたがあちきが死ぬようなことになってることを知ってるでやんす・・・?」
「・・・知っているのか・・・何もかも・・・」
「・・・え・・・?」
自分の耳が信じられなかった。
「そうか・・・だったら話は早い。
どうせみんなにはお前が引退したことを知らせたばっかりだ。今度こそ、
お前に消えてもらうしかないな。」
「・・・じゃあ・・・やっぱり・・・ぐぅっ!!」
突然、足が動かなくなる。力が入らない。
「・・・そろそろだと思ってはいたが・・・やはり、来たか。」
「え・・・?」
「悪いなぁ・・・お前の整備のときにな・・・限界値超えさせてたんだよ。
もっと早く走れるように。」
「・・・それ・・・じゃぁ・・・」
「トーゼン、お前の身体には必要以上の負荷がかかる。ギアがぶっこわれるのも時間の問題
だったが・・・このタイミング、神の思し召しとでも言うべきだろうな・・・」
オーナーは、そばにあったレンチを手に取った。
「・・・は・・・はは・・・」
自分が早く走れたのは、腕の良い整備士のお陰でなく、
いわばドーピングによって勝利を収めたスポーツ選手達と同じようなものだった。
「さぁ。バカな自分を恨んで・・・壊れてくれよ!!」
バガァン!!
つづく