十字王:2
・・・待て。冷却ファンだと?
なぜ電源の入っていないバリスタから冷却ファンの音がする?
アームのほうに目をやると、すでに彼はバリスタのそばにいた。
「小癪な・・・狸寝入りとはずいぶんとなめたマネをしてくれますね。」
カウントが0になる前に、バリスタの口元がゆがむ。
「・・・誉めてやろう。」
カウントが0になると同時に、メンテナンスベッドからバリスタが跳ね起き
足を組んでベッドに腰掛ける。
「ゼロと同時に貴様らの首をはね・・・
さっさと外に出てやろうと思ったのだがな。
余の崇高な計画に気づくとは、流石は現指揮官というべきか?」
にやり、とした笑顔でバリスタ。
「ブレイド。わかっていますね?」
「・・・はいよ。大将。」
・・・当然ながら。
カウントよりも前に起動するなど今日の実験予定の中にはなかった。
『想定外の事態』だ。
「ふむ。余をここから出さぬと申すか。
二人がかりとは。なかなかに手ごわいな。
・・だが。」
瞬間、扉の外からガオン!!というような音がする。
外で何かが暴れているような音だ。
「先に扉さえ開ければ、後は簡単なものだ。」
「・・・ッ!!やりやがったな・・・!」
扉の外で待機しているテックボットたちが暴れているのだ。
そして、厳重だった扉がいとも簡単に開く。
「ご苦労であるぞ。・・・ふふ。コントロール範囲も上々だな。」
言うなればアームの後継機・・・バリスタ。
バリスタが後継機、そして試験機たる理由はその能力のためだった。
『ジャック』
ありとあらゆる機械のコントロールを奪い取る能力。
・・・さっきから身体の自由が効かないのもそのせいだ。
十字王:1
思い立ったが吉日!ってわけで久々にスピンオフを書いてみた。
こっから本文な。
「ん・・・?」
メインルームの前通路に入ると、ブレイドの嗅覚センサーが芳しい香りを察知する。
コーヒーの香りだ。
「やっほー、ブレイドー!」
茶色の猛禽類のような小柄なテックボット・・・スピアが宙を滑って近づいてくる。
「・・・サイゼムの仕業か。」
スピアの手にマグカップを見つけると、ブレイドは ふっ 、と息を吐いた。
「サイゼムってば砂糖とミルクありったけ入れちゃってさ。子供なんだからぁ。
ま、ボクは牛乳と練乳があれば問題ないけどねー」
同族嫌悪、似た者同士だな。
やれやれと思いつつ、メインルームに入る。コーヒーの香りが一段と強くなる。
「おかえりなさいませブレイドどのっ!」
「お疲れ様にございます!御大将!」
似たような口調と声で似たようなことを大声で叫ぶ、色以外似たような見た目の二人。
サーベルとロンデルがブレイドを迎える・・・いや、迎えるというか『抑える』だな。
サーベルがサイゼムの手を抑え、ロンデルがコーヒーメーカーを引っ張っている。
「ええい!御大将の分まで渡すわけにはいかぬっ!!」
「淹れたての時にいないブレイドが悪いんだよ!ケラケラケラケラ!!」
「サイゼムめが我らの分まで奪い取りっ・・・さらにはブレイドどのの分ま
「いらねえ。」
部屋の隅で、クラブラーが「ですよねー」といった顔をしている。
サイゼムの嗜好品好きには呆れたものがある。
とはいえ、好きなものを追求する・・・『欲望』というのは嫌いではない。
(コーヒー・・・か。)
情けない話、コーヒーには嫌な思い出・・・人間風に言うなら『トラウマ』というヤツがある。
・・・あれは、俺たちテックボットが起動した数か月後。
今から・・・
-某日某時刻某所。
アームズテック社・起動試験室
「ほぉ。こいつが新型・・・か」
「開発ナンバー『00030』・・・バリスタ。」
部屋の中央付近に位置したメンテナンスベッドの周囲で技術者たちが作業をしている。
それを遠巻きに見つめるアームとブレイド。・・・そして部屋の外にも、テックボットが数体待機している。
「ずいぶんと厳重な警備だなァ。そんなに危ないヤツなのかい?旦那よぉ。」
「事前に説明をしたはずですが?・・・実際に起動してみなければ判断はできないでしょうね。
・・・危険性をはらんでいるのは確かですがね。」
説明を受けていることはわかっている。堅物のアームをからかってやろうと思っただけだ。
00030。この数字の羅列が意味するものは、このガラクタが試作品であるということだ。
試作型というより試験機、新機能の実験機であることを意味する。
-[起動準備完了。職員は至急退避してください。]-
アナウンスのあと、技術者が分厚い扉をくぐって部屋を出ていく。
10・・・9・・・8・・・
数十秒ののち、カウントダウンが始まり、バリスタの冷却ファンの音が鳴り始める。
こっから本文な。
「ん・・・?」
メインルームの前通路に入ると、ブレイドの嗅覚センサーが芳しい香りを察知する。
コーヒーの香りだ。
「やっほー、ブレイドー!」
茶色の猛禽類のような小柄なテックボット・・・スピアが宙を滑って近づいてくる。
「・・・サイゼムの仕業か。」
スピアの手にマグカップを見つけると、ブレイドは ふっ 、と息を吐いた。
「サイゼムってば砂糖とミルクありったけ入れちゃってさ。子供なんだからぁ。
ま、ボクは牛乳と練乳があれば問題ないけどねー」
同族嫌悪、似た者同士だな。
やれやれと思いつつ、メインルームに入る。コーヒーの香りが一段と強くなる。
「おかえりなさいませブレイドどのっ!」
「お疲れ様にございます!御大将!」
似たような口調と声で似たようなことを大声で叫ぶ、色以外似たような見た目の二人。
サーベルとロンデルがブレイドを迎える・・・いや、迎えるというか『抑える』だな。
サーベルがサイゼムの手を抑え、ロンデルがコーヒーメーカーを引っ張っている。
「ええい!御大将の分まで渡すわけにはいかぬっ!!」
「淹れたての時にいないブレイドが悪いんだよ!ケラケラケラケラ!!」
「サイゼムめが我らの分まで奪い取りっ・・・さらにはブレイドどのの分ま
「いらねえ。」
部屋の隅で、クラブラーが「ですよねー」といった顔をしている。
サイゼムの嗜好品好きには呆れたものがある。
とはいえ、好きなものを追求する・・・『欲望』というのは嫌いではない。
(コーヒー・・・か。)
情けない話、コーヒーには嫌な思い出・・・人間風に言うなら『トラウマ』というヤツがある。
・・・あれは、俺たちテックボットが起動した数か月後。
今から・・・
-某日某時刻某所。
アームズテック社・起動試験室
「ほぉ。こいつが新型・・・か」
「開発ナンバー『00030』・・・バリスタ。」
部屋の中央付近に位置したメンテナンスベッドの周囲で技術者たちが作業をしている。
それを遠巻きに見つめるアームとブレイド。・・・そして部屋の外にも、テックボットが数体待機している。
「ずいぶんと厳重な警備だなァ。そんなに危ないヤツなのかい?旦那よぉ。」
「事前に説明をしたはずですが?・・・実際に起動してみなければ判断はできないでしょうね。
・・・危険性をはらんでいるのは確かですがね。」
説明を受けていることはわかっている。堅物のアームをからかってやろうと思っただけだ。
00030。この数字の羅列が意味するものは、このガラクタが試作品であるということだ。
試作型というより試験機、新機能の実験機であることを意味する。
-[起動準備完了。職員は至急退避してください。]-
アナウンスのあと、技術者が分厚い扉をくぐって部屋を出ていく。
10・・・9・・・8・・・
数十秒ののち、カウントダウンが始まり、バリスタの冷却ファンの音が鳴り始める。